現在の天守閣は1958年に再建された鉄筋コンクリート造り(浜松市) |
浜松市はブランド力向上に向けたキーワードとして「出世の街」を掲げる。徳川家康が築き、江戸時代には多くの城主が幕府の要職に登用され たことで「出世城」の異名を持つ浜松城が拠点となる。市や関連企業は城の魅力を高めようとイベントなどに積極的に取り組む。鈴木康友市長は「出世をめざす 会社員が訪れる聖地にしたい」と意気込む。
浜松市によると、浜松城は1570年ごろ徳川家康が築いたとされる。歴代城主のうちの「出世頭」はなんといっても家康だ。29歳から17年間を過ごしたといい、武田信玄に三方原の戦いで敗れた時も居城にしていた。
江戸時代に入ってからは徳川家にゆかりの深い大名の転封が繰り返された。その中からは天保の改革を行った水野忠邦をはじめ、後に老中や寺社奉行に登用される大名も多く現れた。幕閣への登竜門としてあえて浜松への転封を願う大名もいたほどだという。
現在も天守閣を中心に城が残るが「城そのものの歴史価値はそれほど高くない」(管理者のホテルコンコルド浜松)。というのも城の大部分は明治に入り一度壊されている。天守閣は1958年に再建されたコンクリート造り。日本城郭協会の「日本百名城」にも選ばれなかった。
そんな「見た目は平凡な城」を全国に売り出すために、「出世」をキーワードにした取り組みが広がっている。
8月、鈴木市長ら家康ゆかりの自治体首長らがNHKを訪れ、「2015年の大河ドラマは徳川家康にしてほしい」と要望した。2015年は家康の 没後400年にあたる。市は県などと記念事業を計画しており、大河ドラマで取り上げてもらうことで、城を中心に観光振興を加速したい考えだ。
市のマスコットキャラクター「出世大名 家康くん」も歴史観光を盛り上げる。現在全国キャラバン中で、各自治体を訪問してイベントにも参加。「出世城」にまつわるエピソードを記した巻物や冊子を配り、行く先々で浜松をアピールする。
天守閣への入場者は戦国大名ブームもあって近年増加傾向にあり、昨年度は15万人に達した。今年は土産売り場でオリジナルカード「出世城パ ワーカード」を発売したところすぐに完売。「出世運上昇を願って買っていく人が多い」(ホテルコンコルド浜松)といい、今も欠品中だ。
城内では10月、明治時代に取り壊された天守門の建設工事が始まった。2年後をめどに完成する。他にも富士見櫓(やぐら)など当時の建物を再建する案がでている。
市は浜松城公園の自然と歴史を生かした長期整備構想案を策定中。市民に憩いの場を提供するとともに、中心市街地の回遊性を確保して街の求心力を高める考えだ。
地元の飲食店や農業生産者などは浜松城近くで定期的に物販イベント「家康楽市」を開いている。今後も市民との接点を増やし、家康や出世にまつわる話を外から来た人に教えられるようになれば、街の観光はもっと盛り上がるのではないだろうか。
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浜松城(浜松市中区元城町100の2)
城の周りに日本庭園や芝生広場などがある公園となっている。天守閣の入場料は高校生以上が150円。午前8時半~午後4時半まで営業する。JR浜松駅から車で5分。
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