電力値上げ、産業界に打撃 大手は数十億円コスト増
- 2012/11/2 1:22
東京電力に続き、関西電力など5電力の間で値上げに向けた動きが広がってきたことを受け、産業界で収益悪化を懸念する声が高まってきた。特に電炉業界など電力消費量が多い企業や、財務基盤が弱い中小企業から「死活問題」との不満も噴出。メーカーの間では海外移転の検討や省エネ設備の増強など自衛策を強化する動きも出てきた。
原子力発電所の長期停止を受け、電力各社は代替する火力の燃料費が経営を圧迫している。このため関電と九州電力が値上げ方針を表明。北海道、東北、四国の3電力も値上げの検討に入った。
関電の値上げ幅は企業向けで2~3割、家庭向けで1割強を軸に調整する見通し。パナソニックの2010年度の電気代は約500億円。国内の電力の約6割を関電から調達しており、値上げはコスト高に直結する。
住友電気工業グループは国内で年250億円規模の電気料金を支払っている。仮に電気代が2割上がれば約50億円のコスト増となる。松本正義社長は「値上げの影響は大きい。生産関連を中心に、節電対策を徹底する」と危機感を強める。
より厳しいのは、電気を使って鉄スクラップを溶かし、製品をつくる電炉メーカーだ。企業向けで平均14.9%となった東電と同規模の値上げの場合、合同製鉄は「関電管内だけで年10億円のコスト増」(栗川勝俊社長)と窮状を訴える。
九州も同様だ。九電は企業向けで2割超、家庭向けで1割前後を軸に値上げを検討するもようで、来年4月からの値上げを視野に入れる。九州旅客鉄道の電力コストは年間約80億円で、仮に10%上がれば8億円の負担増。唐池恒二社長は値上げに一定の理解を示しつつ、「九州経済への影響を懸念している」と話す。
九州が国内生産額の25~30%を占める半導体産業も電力消費が多い。半導体を受託生産する新日本無線の子会社、エヌ・ジェイ・アール福岡(福岡市)は「値上げは大きな痛手。節電にも限界がある」と訴える。
中小にとって値上げはまさに死活問題だ。金型製造のコスモ精機(愛媛県東温市)の松原正広社長は「節電でコスト増を吸収したいが、耐えられるかは値上げ幅次第」。樹脂成形品製造のカツロン(大阪府東大阪市)は省エネ型装置を導入し全社で10%節電を実現したばかり。石川明一社長は「経営努力が無になりかねない」と嘆く。値上げを価格に転嫁できる状況にはなく、各社は動揺を隠せない。
東北では被災地の復興を目指す中小企業の足を引っ張るとの懸念も出ている。三陸の水産加工大手、阿部長商店(宮城県気仙沼市)は年間1億円以上の電気を使う。「被災地では人手不足で人件費も上がっており、値上げは追い打ちになる」(阿部泰浩社長)という。
広がる電力値上げに企業も対策を急ぐ。キリンビールは北海道千歳工場(北海道千歳市)で発光ダイオード(LED)照明などの省エネ機器を導入するなど、今冬の最大使用電力で前年同期比15%以上の削減を目指す。国内生産拠点のピーク時の電力使用量を14年度までに10年度比で半減させる目標を持つコマツは、粟津工場(石川県小松市)などの老朽化した建屋の統廃合を来年から本格化し、節電を徹底する。
経団連が今春実施したアンケートでは、国内電力料金が上昇した場合、半数近くの企業が「生産を減少させる」と回答している。金属部品製造の堀尾製作所(宮城県石巻市)のように、生産の海外移管を検討する動きが広がる可能性もある。
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