自転車観光で町おこし 諏訪湖・松本城・佐久
長野県内で自転車をテーマにした地域振興プロジェクトが相次ぎ誕生している。サイクリングや自転車レースを観光の目玉に位置付け、集客から部品製造まで幅広い地域活性化につなげる狙いだ。健康増進につながり環境への負荷も小さい自転車への注目は全国で高まっている。冬季は降雪の影響も受けるが、自然景観を生かし一工夫凝らしたアイデアを出している。
諏訪市は5日、諏訪湖畔に休憩所「サイクルオアシス」を設けた。諏訪湖は1周約16キロでほぼ平たんな道。「諏訪湖周サイクリングが首都圏の愛好者にひそかなブーム」という声を受け、休憩中の愛好者から実態を聞き取りで調査、観光戦略に生かす狙いだ。
市を動かしたのは工業デザイン会社、ケルビム(諏訪市)の堀内智樹社長。15年前、東京から諏訪に移り住むと、首都圏からサイクリングのために友達が訪ねてくるようになった。「諏訪こそ自転車を使ったまちづくりに向く」と確信。官民で1月に「スワサイクルプロジェクト」を発足させる立役者となった。
自転車に向くと見るもう一つの理由が製造業の集積だ。同プロジェクトは5月に県産材を使った木製フレーム自転車「木龍」を発表。来年春にも量産化を目指し、工業、観光の両面で自転車による地域活性化に挑む。
9月23日、松本城公園でプロ選手17人の自転車競技「シクロクロス」が開かれた。知名度の低い競技に雨まで降る悪条件だったが、主催者発表で約400人の観客が訪れた。未舗装の特設コースを専用の自転車で周回し、途中には自転車をかついで上る階段もある。
松本青年会議所(JC)が初開催した企画の中心は、プロの自転車競技チーム「ブリヂストン・アンカー」に所属する辻浦圭一選手だ。松本は雨が少なく夏が涼しい。複数の自転車選手がトレーニング拠点にしており、「それなら自転車レースが新たなイベントになる」と考えた。松本JCのまちづくり実践委員会の山本篤司委員長は「自転車大会を続けて地域を活性化したい」と話す。
佐久市では11月4日、幼児向けの自転車「ランニングバイク」のレースが初めて開かれる。参加するのは2~6歳の子どもだ。地元の愛好サークルと佐久市観光協会が共催し、募集開始からわずか数日で定員80人がいっぱいとなった。今後も定期開催し、親同士の交流や、他の地域からの誘客につなげる狙いだ。
ランニングバイクはペダルがない、足で地面を蹴って進む自転車。2009年ごろから日本でも普及し始めており、子どもがペダル付き自転車に乗るためにバランス感覚を養うのに役立つ。佐久市内では口コミで人気が広がり、地域振興の目玉に浮上した。
自転車活用推進研究会(東京・杉並)の小林成基事務局長は「ガソリン代の上昇もあり自転車人気は先進国共通」と指摘。ただ、自転車が安全に走れる道が少ないなど課題も多く、小林氏は「縦割りではない総合的な視点が必要」としている。
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