物流から見たグローバル化 海外進出の加速を実感 日本通運社長 渡辺健二氏
世界経済の減速を背景に日本の景気にも暗雲が漂い始めている。内外の物流の動きを通して見た世界経済の状況は。日本企業のグローバルな活動にどんな変化がうかがえるか。日本通運の渡辺健二社長に聞いた。
弱い復興需要
――まず国内の貨物輸送の動きは。
「経済のサービス化を反映してモノの動きは2011年度まで12年連続で減った。12年度は東日本大震災に伴う落ち込みの反動で久しぶりに増えると見ていたがあやしくなってきた。足元は大きく落ちており、下半期は予想より悪くなりそうだ。円高もあり生産が落ちているのではないか」
――復興に伴う需要はどうですか。
「物流面ではあまり感じられない。がれき輸送などはあるが、新しい街づくりなど復興につながるモノの輸送は増えていない。生産関連では震災前を超える力強さはない。特に中小メーカーの貨物の動きが弱い」
――世界的な貨物の動きはどんな状況でしょうか。
「やはり欧州が相当悪い。当社の航空貨物で見ると、日本から欧州向けは9月は40%を超す落ち込み。電機・精密機械、自動車部品などが中心だ。中国から欧州向けも半減している。海上輸送も減少が止まらない状況だ。米国向けは航空貨物が落ちている」
――新興国向けは。
「航空輸送の中国向けは波が激しい。落ち込んでいた後、8、9月は増えた。スマホ関係の部品が大きく動いた。ただし、これは新製品投入に伴う一時的な増加ではないかと見ている。日中関係の緊張に伴う荷動きの変化は今のところ目立った形では出ていない」
「中国以外のアジアは6月までは動いていたが、その後は芳しくない。メキシコやブラジルに進出している自動車メーカー向けの部品などの海上輸送は大きく伸びている」
――日本企業の海外進出の動きが目立ちます。物流面からはどう見えますか。
「海外へ移る動きが強くなっていると実感する。アジアへの転勤など海外引っ越しが伸びているが、それだけではない。我々の事業の一つに重量品の輸送があるが、工場のラインの移転の注文が結構来ている」
「最も目立つのは自動車業界。すでに海外進出しているが、もう一回出ていくという感じだ。注目しているのは中小企業の動きだ。銀行と協力して中小企業の海外進出を支援する仕事を始めたが、思った以上に問い合わせがある。外に出ていかないと持たないという感じが間違いなくある」
買収や提携重要
――企業の海外移転に今後どう対応しますか。
「動きに合わせて我々も新しい所に出ていく。最近もコロンビアの代理店と資本提携したほか、ミャンマーに事務所を設置した。地域的にはインドなど南アジアから北アフリカまで入っていかないといけないというイメージを持っている」
「顧客の動きがこれまで以上に速くなっている。自力で出ていくのでは間に合わない。海外事業者の買収や提携を進めたい。日系以外の顧客の取り込みもしていく必要がある。その意味でも買収や提携は重要。米国の会社を今年買収した理由の一つもそこにある」
(聞き手は編集委員 実哲也)
わたなべ・けんじ 海外拠点数は400超。国際関連の売上高比率50%を目指す。62歳。
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