学内改革どう早める
変化への対応、学長主導 パナソニック特別顧問 森下洋一氏
少子化で大学進学者数が伸び悩み、大学経営を取り巻く環境は厳しさを増している。4年前から関西学院理事長を務める森下洋一パナソニック特別顧問は、教学と経営の一体化を進めて意思決定や学内改革をスピードアップする重要性を指摘。社会変化への対応力を高め、若者のニーズに即応して教育の場を整えることが競争を生き残るカギだと主張する。
――少子化のあおりを受け定員割れする私立大が約4割もあります。
「日本には私立大だけで600ほどあり、多すぎる。将来はある程度整理されるべきだ。人口に対し適正な規模と質になる必要がある。若年人口が減少する中、受験生に選ばれる大学になるには教育や学風に磨きをかけ、学校の特色を明確にすることが欠かせない」
――魅力ある大学づくりには、何が求められるのでしょうか。
「社会は今、感覚的には10年前の3倍ほどのスピードで変化している。何年もかけて物事を決めているようでは世の中が一変してしまう。ただスピードは上がっているが予想もしないことが起きるわけではない。『5年後はこうじゃないか』との予見は持っているが、思った以上にすぐ目の前に来る、という感じではないか。変化への対応力が問われる」
「若者が志す学問も変化しており、『こういうことを学びたい』との思いを見越す必要がある。環境、スポーツ医学など従前から重要性を指摘されていた学部学科を素早く立ち上げた大学は学生が集まり、旧態依然とした大学は志願者が減っている。30年前と同じような学部学科を引きずっていては新たな挑戦はできず、社会の変化に乗り遅れる。とはいえ、単に学部を増やせばよいわけではない。適宜、削減する必要も当然ある」
脱ボトムアップ
――変化への対応力を高めるための方策は。
「企業は方向性が決まれば迅速に動くが、大学はボトムアップ型で、しかも学部単位で動く。学長には大きな権限や責任は持たされず、学部に権限が下りてしまっている。学部ごとの意向を学長が調整し、それから理事会と調整する。だから非常に意思決定が遅い」
「4年前に関西学院の理事長に就任した時、こうした点に気づいた。学長の権限を強化し、教学に関する責任だけではなく、経営にも加わってもらう仕組みを考えている。大学の執行部と経営の一体化を進めれば、大幅なスピード向上につながる」
理系教授は敏感
――大学の変化対応力の現状をどう分析していますか。
「国立大は法人化したこともあって、ガバナンスやマネジメントのあり方が変わりつつある。学長を法人の代表にして経営資源を集中させる動きもある。私立大は自主性が高いはずだが、変わったところもあれば以前のままのところもあり様々だ。全体的には大学の自治を理由に、変化対応が遅いようだ」
「変化にどう対応し、どこに経営資源を集中すべきかについては、まだ議論がある。大学の教授陣は総じて保守的だが、理系の先生方は社会の変化に敏感で、将来の洞察力が高い。教学と経営を一体化する中で、そういった先生方の様々な意見を集約し、絞り込むのが学長の仕事であり、経営側の責務でもある」
――少子化以外に、大学を取り巻く環境の変化をどうみていますか。
「世界で日本が置かれている位置づけが変わっている。国力を支える創造性と活力が低下しているようだ。人々が流れに身を任せて主体的に動かなくなったためではないか。資源がない日本は人の力、知識や意識のレベルが向上しない限り、国力は回復しない。次代を開拓する人材育成に資源を集中するのは必然だ」
――これからの大学が育成すべき人材とは。
「社会変革に挑戦する人材や大きな志を持って世界に羽ばたく人材だ。大切なのはグローバル人材の育成。海外で活動するには、現地文化の習得が不可欠だ。海外留学へ送り出す学生を大幅に増やさなければならない」
「奨学金制度を拡充することも必要だ。海外では基金制度がうまく機能しているが、日本では基金が集まりにくい。教育への寄付は税制面でずいぶん考慮されてはいるが、教育に寄付する文化自体がまだ育っていない。社会全体で取り組むべき問題だ」
もりした・よういち 1957年関西学院大商卒、松下電器産業(現パナソニック)入社。93年社長、2000年会長、12年6月から現職。08年から関西学院理事長。兵庫県出身。78歳。
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