対外開放が日本の成長を支える
英「エコノミスト」誌がまとめた世界の長期予測はきわめて楽観的な将来を描き出している(日本語訳は「2050年の世界」文芸春秋社)。アジア、アフリカなどの人口成長国が世界を引っ張るとみているからだ。
最近、日本経済はすでに足元でマイナス成長に陥っているようだ。世界経済についても悲観論が優勢になってきた。ユーロ危機の出口が見えず、頼りの米国や中国、さらにはインドなどの新興国の足取りもふらつき始めたから当然だろう。
しかし、40年前、ローマ・クラブが「成長の限界」で唱えた悲観論は論理的にみればほぼ完全にはずれた。世界経済はいまは大混迷期にあるが、この先は明るいとみるのが正解だろう。
日本にばかり目を向けていると、政治といい経済といい、悲観材料ばかりが目に入る。労働力の増加が経済成長に直結したいわゆる人口ボーナスの時代から人口減少が足かせとなる人口オーナスの時代に変わったといわれる。
一方、世界に目を転じてみると、アジア、アフリカなどではすでに膨大な中間所得層が生まれつつある。
40年前は、欧米以外でテイク・オフ(経済の離陸)した国は日本だけでこれは例外だ、とみられていた。しかし、その後、アジアで台湾、韓国、シンガポール、香港が日本に続いた。
この4つの国・地域の経済発展を分析したエズラ・ボーゲル教授が「アジア四小龍」(日本語訳は中央公論社)を著したのはわずか20年前だ。
今度は規模が違う。「日経ヴェリタス」最新号は、2025年までに新興国は世界の消費額の半分を占めるという予測を紹介している。日本は人口オーナス期にあるが、世界はこれから経験したことのない規模の人口ボーナス期に入る。世界経済の成長力は長期にわたって大きく高まる。
この世界の経済成長の力を取り込むことこそが日本の成長戦略の中核であるべきなのだ。そのためには対外的にオープンにならなければならない。これに成功すれば日本経済の将来は大きく開けることになる。
野田政権が仕上げた税・社会保障一体改革のあとの大政策は、対外開放政策の確立・強化であるべきだ。中でも環太平洋経済連携協定(TPP)への参加は急ぐ必要がある。
(一直)
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