Thứ Hai, 10 tháng 9, 2012

中洞正:自然放牧で林業と共生(NK2012/8/18)


理想の酪農を追求 中洞正さんに聞く
本物の牛乳 思い出して 自然放牧、林業と共生

2012/8/18付
日本経済新聞 夕刊
2436文字
 森に数年続けて牛を放つと牧場は激変する
 盛岡から宮古行きバスで2時間近く。茂市で降りると中洞正さんとえく子夫人が、バス停で迎えてくれた。そこからさらに車で山を登って30分。やっと北上山系にある中洞牧場の「山」が見えてきた。
 標高720~900メートルに位置する牧場(50ヘクタール)は草原と林間が織りなす牛たちの別天地。この山の景観は、入植して28年、牛と共に切り開いてきた芸術作品でもある。
 「これは林業との共生で牛の力を借りて山を管理しているのです。森林を残し、その下に牛を放す林間放牧とか混牧林という手法で、戦前はこうした酪農がいっぱいあった。米国から濃厚飼料や草まで買うようになって崩壊していったんです」
 IT企業と協業してこうした山地(やまち)酪農を全国に広める「山地酪農研究所」の所長でもある中洞さんの語り口は熱い。「日本の森林率は68.5%で北欧の2国に次いで世界で3番目。日射量、雨量も多く植物の生育に適している。ところが里山も放置され、ヤブと化して、人間が入れない状況になっている」
 「人為的な拡大造林という国の施策で森林の4割が針葉樹化した。その奥山も管理されず荒れ放題。広葉樹なら木の実が付いて野生動物が山で生活できるのに、エサがなくなり人間の住むところに出没している」
 中洞牧場の牛は通年、昼夜放牧され、牛の嫌いなエンジュや唐松などの針葉樹の一部を除き、クマザサであろうが、ブッシュのあらかたを食い尽くしていく。牛は午後4時頃、山を駆け下りて、牛舎でおやつ(砂糖大根の搾りかす)を食べながら搾乳を済ますと、三々五々また山に帰って行く。こうして生命力の強い野芝の草原が広がっていく
 「国土の68.5%にこれだけの植物という牛のエサがある。密生した草丈の低い下草を生やすことが林業と酪農の共生につながる。山を守りながら牛のエサも確保できる
 山地酪農を志す若者を受け入れる待望の研修施設も完成し、意欲的な8人の若者が汗をかく。森の中は保水力のある広葉樹のナラ・ブナ林が広がり、子牛が首を伸ばして届く限りの葉を食べていた。
 日本の牛乳は、乳白色でなく白色?
 「小学生にバターやクリームは何からできますか、と聞くと皆、『牛乳』と言います。じゃあ市販されている牛乳からバターとクリームを作ってご覧なさい。できませんね。クリームもバターもできないのが、日本の牛乳の90%以上を占めているんです」
 中洞の牛乳瓶の飲み口のあたりに付着しているものがある。「これが何か、なめてみれば分かりますよ」
 殺菌の仕方が違う市販の牛乳(ホモ牛乳)は120度2秒の超高温で殺菌する。その時、熱交換機にこびりつく牛乳の脂肪球をホモジナイザーという機械に入れて砕く。「業界はこれを均質化と言うが、私に言わせれば単なる脂肪球の破壊でしかない。確かに飲みやすく、超高温殺菌で賞味期限2週間と日持ちがして大量に安く流通させることが可能になった。しかし、バターもクリームもできないものを牛乳と言えるのか」
 中洞の牛乳は「一番低い温度で限りなく原乳のままで届ける」ために65度で30分の低温殺菌法(湯せん)をとる。
 「大量生産を否定するつもりはないが、食い物は命そのものにかかわる。高度な技術を使う超高温殺菌はタンパク質が熱変成することで焦げ臭さがノドに絡み、さらっとした牛乳にならない。本物の牛乳は、搾りたてを冷やすとこれほどと思うほどさらっとしています
 差し出された牛乳に淡い色がある。「乳白色という言葉がありますね。残念ながら日本の牛乳は乳がなくて白色。なぜ乳白色になるか。それは草の色が牛乳に移るからです」。水分の多い青草を食べる夏場は乳白色となる。これが自然なのだ。
 人間の食糧を家畜に食わせるのは反社会的
 一般の乳牛は大体6歳で淘汰されるという。
 「1トン近い牛が草ではなく、輸入濃厚飼料を食い、運動をしないのだから、足腰の関節がやられ、最後に内臓もやられる。放牧の牛は大丈夫。うちには19歳の現役もいる」
 牛乳のパッケージに描かれた堂々たる放牧の絵は、大概が「単なるイメージ戦略にすぎない」。実際は舎飼いで「平均1.8平方メートルという世界に寝起きしている」。
 「牛はミルク製造機械ではない。牛乳は牛のお母さんが出す母乳。一番の原点は、簡単な言葉で言えば、牛が幸せであるかどうかです。舎飼いの酪農では、生まれた子牛は早い段階で人工乳に切り替える。幸せな牛の環境をつくってやるためには何が必要か。それは、できるだけ広大で自由な行動がとれ、そこには当然、草食動物である牛のエサとなる植物が豊富にあって、常におなかいっぱい食べられる環境にあることです」
 牛が健康かどうか、後ろから見た胴体の形で判断できるという。「普通は△で、肉牛は□になる。うちの牛は○型です。反すう胃という驚異のメカニズムを持つ牛の第1胃が発達して毎日傾斜地を歩いているから心肺機能も丈夫で丸く見える。肉牛は究極的に太らせるから角張ってくる」
 「日本人にとって牛乳は基本的にぜいたく品であったり、滋養食品というレベルでいいのでは。そんなにガバガバ飲む必要はない。日本の食のベースは米や大豆だったり小魚や海藻だったり、日本本来の食文化があった。それを全否定して味噌や納豆や豆腐を食う民族がすべてを外国に委ねるなんてとんでもない」
 「消費者に牛乳の現場の実態を分かってもらいたい。イメージだけで売っている状態から一度真っさらにして、国土を利用した日本で自生する草を食った本当の牛乳を流通させるべきではないか」
(編集委員 工藤憲雄)
 なかほら・ただし 山地酪農家(中洞牧場)。1952年、岩手県生まれ。東京農業大学拓殖学科卒。岩手県岩泉町で山地に通年昼夜、牛を放牧する山地酪農を確立。IT企業の「リンク」と共同で森と共存する酪農を国内に広めている。東農大客員教授。著書に「幸せな牛からおいしい牛乳」「黒い牛乳」。

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