拙い外交、傷広げる 国力低下、背景に
中国内では目を覆いたくなるような光景が続く。日本を標的にした投石や破壊。この暴挙によって、中国は貴重なものを失った。それは大国としての品格と信頼感だ。
一方で日本の損失も大きい。破壊による実害はもちろんのこと、日中に「領有権争い」が存在することも世界に知れ渡ってしまった。対中戦略の失敗といわざるを得ない。
原因はさまざまだが、ひとつは中国の出方の読みあやまりだ。「政府が買うのはきちんと管理するためだ」。尖閣諸島の購入計画が浮上した7月ごろから、政府は中国側と接触を繰り返し、こう説明してきた。そのときの反応も踏まえて、米政府にも「『日中で意思疎通はできている』と伝えていた」(日米関係筋)。
だが、中国内の反日デモが政府の予想以上だったことは、玄葉光一郎外相が豪州の外遊を切り上げ、あわてて帰国したことからも明らかだ。
一因は日中のパイプの乏しさにある。権力闘争が続く中国では、従来の外務省や共産党のルートに頼るだけでは、相手の出方を読み切れない。
「胡錦濤国家主席らの政敵はどう出るか、軍はどこまで反発するか。反日デモの規模は。これらを把握するには党、軍、地方、そして草の根に広がるパイプが必要だが、日本にはそれが乏しい」。中国の内情に詳しい外交筋はこう指摘する。
もっとも、そうしたパイプを整えるだけでは、中国の対日強硬がやむことはないだろう。日中の国力が逆転しつつあるなか、中国は「もう日本に配慮しなくてもいい」と思い始めているからだ。
ならば日本は米国や他の友好国とも組み、中国の強硬路線に歯止めをかけていくことが肝心だ。
尖閣国有化に際しても、日本への明確な支持を得られるよう米側には入念に根回ししておくべきだった。だがそれも十分だったとはいえない。17日に来日したパネッタ米国防長官は「尖閣の帰属については中立」との立場を崩さなかった。
日中パイプの裾野を広げ、米国や友好国と対中戦略でがっちり組む――。まずこの2つに早急に取りかからないと、外交危機は治療できない。
(編集委員 秋田浩之)
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