日ミャンマー、官民でインフラ投資拡大
来月協議会、5年の行動計画
政府は日本からミャンマーへの投資拡大に向け、今後5年程度にわたる行動計画を策定する。10月にも両国の政府関係者や経済団体による協議会を立ち上げ、具体的な検討に入る。ミャンマーでは民主化の進展や2015年の東南アジア諸国連合(ASEAN)共同体の発足に向けてインフラ需要が拡大。日本企業が投資しやすい環境を整え進出を後押しする。
外務省と国際協力機構(JICA)、経団連、日本商工会議所などは8月、「ミャンマーに関する官民連携タスクフォース」を創設し、同国の投資環境や経済協力について意見交換を始めた。ミャンマー側から政府関係者や経済団体を交えた協議会「共同イニシアチブ」を来月にも発足させ、支援策の内容と時期を明記した行動計画の協議に着手する。
ミャンマーは14年にASEAN議長国として首脳会議を開くほか、15年を目標とするASEAN共同体の構築で周辺諸国との物流拡大が見込まれるため、国境をまたぐ幹線道路や鉄道の建設が急務になっている。
行動計画には最大都市ヤンゴンと中部の商業都市マンダレーを結ぶ幹線鉄道やインド洋への出入り口となるダウェー港などを盛りこむ方針。ヤンゴン近郊で計画する経済特区「ティラワ」の開発や水力発電所、通信網などにも力を入れる。
インフラ以外では商取引の拡大に必要な法整備の支援や人材育成も盛り込む。ミャンマーでは15年にも証券取引所が開設される見通しで証券取引法の制定に向け専門家の派遣や日本での研修を実施。国際協力銀行(JBIC)や日本貿易保険を活用した金融支援策のほか、医療や法律、農業などの人材育成も急ぐ。
ミャンマー向けの経済支援を巡っては外務省の政府開発援助(ODA)など各省が個別に実施、検討している。官民を集めた協議会を新たに設けることで情報の集約・共有を容易にするとともに産業界の要望を反映しやすくする。
ミャンマーに対する日本からの直接投資累計額は、今年3月末時点で2億ドル(約155億円)強と国・地域別で13位。米欧の経済制裁緩和やテイン・セイン政権の外資導入政策を受け、日本企業の駐在員事務所開設などが相次ぐ。
ただ、ミャンマーで国会審議中の改正外国投資法の成立が遅れているうえ、地元企業への配慮から最低資本金の大幅引き上げや出資比率規制が法案に盛り込まれるなど、外資誘致と逆行する動きも出ている。
日本は4月の日ミャンマー首脳会談で、ODAのうち大規模なインフラ整備などに使える円借款を25年ぶりに再開することを表明した。10年度にミャンマーに供与したODA供与額は約30億円にとどまるが、将来はベトナムと同程度の2000億円規模に増やす考えだ。
軍事、経済両面で存在感を増す中国をけん制する意味合いもある。日本貿易振興機構(JETRO)によると中国は11年度のミャンマーの輸出額の24%、輸入額の30%を占めるが、近年は経済の中国依存一辺倒から脱却する構えをみせている。中国とインドに隣接するなど地政学的な重要性も高く、日本は投資拡大を契機に政治・経済両面での関係強化をめざす。
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