胡主席、当面存在感か 保守派の巻き返しが火種
【北京=島田学】中国共産党が指導部を刷新する党大会の11月8日開催と、有力者だった薄熙来氏の処分を公表した。双方に次期指導部人事を巡る権力闘争が絡む構図だったが、薄氏擁護論を抑えた胡錦濤国家主席は当面、一定の存在感を維持するとの見方が強まる。ただ沖縄県・尖閣諸島を巡る日中対立が続く中、知日派とされる胡氏らと一線を画す党内保守派の巻き返しも想定され、日中間の火種となる可能性もある。(1面参照)
薄氏の処分を巡っては厳罰を免れそうだとの見通しも出ていたが、胡氏は厳しい処分を下した。背景には、胡氏主導で進んでいた人事調整が、薄氏支持者の多い党内保守派の抵抗に遭っていたという事情が大きい。
■軍事委主席に留任?
尖閣問題を引き金とする一連の反日デモでも、保守派とみられるグループが薄氏の信奉した毛沢東主席の肖像画を掲げて行進する姿が目立った。現場からの報告映像を、胡氏が強い危機感を持って見たことは想像に難くない。これが厳しい処分につながったようだ。
党内保守派を抑えて処分を決めたことで、胡氏が今後も党内に一定の影響力を残すという観測が広がる。ただ、どのような形になるかは不透明。江沢民前国家主席と同様に、党総書記退任後も人民解放軍の最高決定機関に当たる党中央軍事委員会の主席に留任し、軍を背景に権力を維持する可能性はある。
■尖閣問題に習氏の影
とはいえ次期最高指導者となる習近平国家副主席も主導権確保を急ぐのは確実。元副首相を実父に持つ習氏は薄氏と同じ党の老幹部の子弟ら「太子党」の一人で、保守的思想の持ち主とされる。
実際、習氏は既に党内向けの勉強会で何度も、2021年の共産党建党100周年へ「中華民族の復興」を目指す考えを表明。尖閣問題を巡る日中の対立激化に習氏の影を感じ取る向きも多い。
「島を返せ。中華民族の屈辱の歴史を繰り返すな」――。デモ隊の叫びは習氏の主張ともダブる。習氏が今後、党内掌握の手段として、胡氏を突き上げた保守化の波に同調し始める可能性はある。
習氏を筆頭とする次期指導部は、毛沢東主席を「革命第1世代」と数えると「第5世代」。1966年からの文化大革命で10歳代後半の教育機会を奪われた層だ。「敵と味方を峻別(しゅんべつ)し、行動が直情的」(共産党元幹部)との評も聞かれ、日本など周辺国にとって中国の保守化は新たな火種となりそうだ。
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